今日は朝早く解放軍の皆は出発してしまい拠点の人影もまばらだ―

眠い目を擦りは階段を下りていく。
窓から差し込む太陽は今日も燦々としていた。








clumsy







手に入れた情報をまとめ上げ今度は武器の手入れや物資の確認。

一通り終わった頃には丁度時計は正午を指していた。
食事をどうしようかと考えてきたところに話しかけられる。

「ねぇ、よかったら食事作るの手伝ってもらえない?」

「作るの?」

「ええ、今殆ど出払ってて人手が足りないの」

「そっか、分かったわ。私は何をすればいいかな」

「ここにある材料で適当に」

「・・・・そう」


言われて一番困る答えを言われてしまった。

指定してくれた方がこっちとしても動きやすいのに、
まして皆が食べるのだから失敗はしたくない。

とは言うものの皆の好きなものとかも知らないし、
腕を組んで悩んだところで答えが出るわけでもなく。


「考えてもムダか。なら私が食べたいものを作ろう」



材料を抱えて水場に行ききれいに洗い流し
台所でナイフを取り出し手際よく下準備をこなす。

昔はよく失敗してやりたくないと思っていたものだ。
それでも一人でいる時間が長いと否応なしに身につくもので―

トントンとリズムのよい音が台所に響きその中を慌しく人が行き交っている。


「上手いものだな」


目の前の事にあまりに夢中になり視野が狭くなっていた時、
突然話しかけられ危うく指を切りそうになった。

「―!!!!なっ、、ウォースラ」

少し離れたところから腕組みをし、
まるで監視するようにこちらを見ているのだ

「居るならそう言ってよ。驚くじゃない」

「何度も話しかけたぞ」

「・・・声が小さいのよ」

「まぁいい。後で話す」

「というか、どうしているの。他の人は?」

「予定外な事があったからな。俺達の班だけ作戦を立て直しに戻ってきたんだ」

「ふーん」

「それより早く作ってくれないか」

「何それ。食べるの?」

「当たり前だろう」


眉がピクリと動いたが仕方なしには調理を続けた。



結局人数が増え時間がかかったが盛り付けも終わり、
お皿をテーブルへと運んでゆとその途中、仲間の兵士が運ぶのを手伝ってくれた。


「じゃあ、これは俺が持っていくよ」

「ホント?ありがとー」


それを手渡しまた次のお皿を持とうと後ろを振り返ったとき、
ウォースラの姿が目に入り、酒場で働いてる感覚で話してしまった。


「そんな所にいるなら手伝ってよ」

「俺は忙しいんだ。それにそういう事は俺がすることではない」


鼻にかかるようなその言い方にさすがの私もムッときた。


「そうですか、失礼しました。ウォースラ様」


王家に仕える名家の生まれなのだから、
ウォースラのその姿勢や誇りがあるのが分からない訳じゃない。
解放軍の統括者としての立場もあるだろうし。

それでも食事の時くらいはその垣根を取り払ってくれても
いいんじゃないかと思うのは無理な事なんだろうか・・・。

彼らしいといえばそうなのだけれど、
もう少しだけ下の人間にも配慮してくれたらいいのに。


「不器用よねぇ・・・」


テーブルを囲み一緒に食事をするなんて、
ここに来てから初めてではないだろうか。
慌しく毎日を過ごす皆がこうして集まったつかの間の時間―

一人で食べる食事よりも話をしながら笑って食べるご飯の方が絶対楽しいのに。

さっきの私の余計な一言を真に受け考え込んでいるウォースラに近づき隣に座った。


「はい、お水」

「ああ、すまない」

「味はどう?もしかしてマズイ?」

「美味しいと思うぞ」

「ホント?ウォースラの事だからこんなの食えるか!、って言うかと―」



「、、なに?」

「さっきは悪かった。あんな言い方をして」

「あなたには立場があるのよね、私の方こそごめんなさい」

「俺は相手に対する配慮が足りないとは感じてはいるのだが」

「気にしているのならそれでいいと思う」

「それは相手がお前だからだ」

「私だからなんだ。それって嬉しいかも」

「別に深い意味はなく、ただ単純にお前が、、その変わっているというか」

「失礼ね、それ」

「悪い意味ではない。うまく説明できないな・・・」

「嫌われてないなら充分だわ」


食事を口にしながらウォースラの様子を窺うと釈然としない表情での顔を見つめていた。


「ウォースラ?」

「それはない」

「何が??」

「嫌うわけが無い、そう言ったんだ」

「え、、、、あ、、、ありがとう」




その言葉に照れて頬が赤くなった私を見て感染するかのように彼の顔も少し赤くなっていた。

隠すように席を立ち最後に「また作ってくれと」言って、
足早にその場から離れていった無骨な褒め言葉がこそばゆくも嬉しかった―